第5回福岡県ワンヘルス国際フォーラム 参加報告

2025/3/25

 2025223日、福岡県ワンヘルス国際フォーラム実行委員会が福岡市内のアクロス福岡で開催した第5回福岡県ワンヘルス国際フォーラムに出席しました。

 当日午前は、福岡県内の高校生がワンヘルスに関する研究成果を口頭及びポスター展示で発表する「ワンヘルス学習発表会」が開催されました。

 身の回りの事象や社会問題について、具体的には農業、環境、野生動物、健康、ウナギ、セラピードック等に関するワンヘルスの取り組みとその成果について発表し、参加者から大きな拍手を以て迎えられました。

 また、本発表会の座長の福岡教育大学の伊藤教授は、ワンヘルスの重要な点として(1)身の回りの問題を課題として設定、(2)社会問題は複雑で複合的であり、様々な分野の協力による解決、(3)行動変容、(4)異年齢交流があり、何より楽しく活動することが重要であるとコメントしました。

 

 午後は基調講演が開催されました。

 世界獣医師会ジョン・デ・ヨン会長(米国)は、2025年のワンヘルスサミット、2026年の世界獣医師大会に向けたワンヘルスの取組み及び米国内の人獣共通感染症の状況等について説明しました。

 世界獣医師会ワンヘルス・ワーキンググループのマーク・シップ座長(豪州)は、分野横断的な課題に対応するため、感染症をはじめとした専門家のデータを共有した学際的なアプローチが重要であり、分野を超えた知識の共有、ハイレベルな専門家による検討には、従来の感染症のスキルだけなく、社会、法律、倫理等様々なスキルが必要であること。また、排水中の薬剤耐性(AMR)モニタリングにポリオで実績のあるメタゲノミクスのフレームワークによる遺伝子解析の導入により、複数地点で新たなリスクを検知可能になったこと、そして感染症等のデータを産業、貿易、観光への影響をふまえた上で世界に発信すべきとコメントしました。

 アジア太平洋医師会連合のマリア・ミネルバP カリマグ会長(フィリピン)は、世界の脅威となっているAMRに関して、AMRの経緯・現状・見通し、家畜への抗生物質使用による肥料及び環境等の食物環上のリスク、抗生物質の適正使用、食物環内におけるAMRに関して医師と獣医師の共通理解とアプローチによる予防措置の強化そして持続可能な食物環と感染症治療について説明しました。

 本講演の座長の福岡県ワンヘルス教育研究推進アドバイザーの西村達次氏(九州歯科大学名誉教授)は、ワンヘルスに関して実社会で力を発揮する人材を大学等で育成する必要性についてコメントしました。

 

 最後に、福岡県から、県内みやま市の保健医療経営大学の敷地内に20283月に開所予定の福岡ワンヘルスセンターについて説明がありました。従来の保健環境研究所と筑後家畜保健衛生所を合併して分野横断的な研究、また、動物保健衛生所は、従来の家畜保健衛生所の対象動物に加え、コンパニオンアニマル、野生動物、動物園飼育動物に対象を広げ、人獣共通感染症、AMRの調査・研究等を実施するとともに、敷地内に生物多様性を学ぶためのワンヘルス体験学習ゾーンを設置予定と説明しました。

One Healthリサーチセンター社会連携部門 菊池 栄作)

 

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