New world screwworm ( Cochliomyia hominivorax )(新世界ラセンウジバエ)

2026/6/30

詳細については参照資料を確認いただきますよう、お願いいたします。なお、現在、本邦においてNew world screwwormの発生は確認されていません。

(画像出典:USDA)

1.概要

New World Screwworm NWS)(Cochliomyia hominivorax) は、家畜、コンパニオンアニマル、野生動物、そしてまれにヒトや鳥類に被害を与える深刻な寄生虫(Serious pest)です。NWSの幼虫(ウジ)は、温血動物の組織を貪食(どんしょく)し、深刻な場合に致命的な損傷を引き起こします1, 2)

NWSは、南米、中米南部、カリブ海の一部の島々の風土病です。米国においては、かつて南西部にまで拡大しましたが、不妊化虫法(Sterile Insect TechniqueSIT*を使用して1966年にNWSを根絶し、2017 年にはフロリダキーズ(Key Deer)における小規模な発生を封じ込めました1

* 1930年代にニップリングによって発案され、1950年代にラセンウジバエで実現した防除法1), 3), 4)

202663日、米国の家畜では60年ぶりにテキサス州の生後3週間の子牛の臍帯(へその緒)付近でNWSが確認されました1), 5)

 

2.NWS

NWSは、ハエ目(双翅目)(Order Diptera)のクロバエ科(Family Calliphoridae)に属します6)

NWSは熱帯および亜熱帯気候で繁殖します。非常に乾燥した高温または低温の天候が長期間続くと死滅します2)

NWSの成虫は、イエバエとほぼ同じ大きさ又はわずかに大きく、成虫はオレンジ色の目、光沢のある青または緑色の体、そして背中に沿った3本の暗い縞模様があります1)

 

3.伝播経路

NWSに伝染性はなく、動物からヒトへ、あるいはヒトからヒトへと直接感染することはありません。NWSは、雌の成虫が温血動物の傷口や体(鼻、目、口、性器など)の開口部に卵を産み付けて寄生します。卵は孵化して幼虫になり、傷口に潜り込んで生きた組織を貪食(どんしょく)します。感染約7日後、NWSの幼虫は地面に落下し、土の中で蛹(サナギ)になります。成虫は、気温と湿度をふまえて754日後に土から出てきます。雌は約3日後に交尾し、雄は成熟後約24時間以内に交尾可能となります。雌の成虫は、一度だけ雄と交尾し、その後1030日の間に最大3,000個の卵を産みます2), 7), 8)

NWSの急速なまん延は、NWSに感染した動物を長距離移動させることが主な要因です2)

 

4.動物の感染

202663日から25日の間、米国の2つの州(テキサス州、ニューメキシコ州)において、牛14例、犬1例、めん羊7例、山羊3例のNWSの感染を確認しました(最終発生は624日に確認されたテキサス州の牛1頭およびめん羊5頭)。現時点で野生動物の感染は確認されておらず、また、NWSの成虫も捕獲されていません5), 9)。中米諸国とメキシコでは、185,000頭以上の動物でNWS感染が確認されています10

NWSが感染したほ乳類及び鳥類は、イライラした行動(Irritated behavior)、振顫(しんせん)(Head shaking)、腐敗臭(Smell of decay)、傷口にNWSの幼虫を確認するこができます1)

 

5.ヒトの感染

米国では、これまでヒトのNWSの症例は報告されていません。中米諸国とメキシコでは2,175人以上の症例の報告があります10)

NWSの感染リスクが高いヒトは、(1)NWSが生息する地域に住む、(2)旅行者(特に中南米、カリブ海、メキシコへの旅行者)、(3)上記地域の屋外で長時間過ごす、(4)上記地域の家畜やその他の温血動物と長時間一緒に過ごす、暮らす、労働を行う、そして(5)開いた傷を持つことです。米国では、ハエウジ症(体表または体内にハエの幼虫(ウジ)が寄生する状態)は頻繁には発生しませんが、NWSの成虫が生息する地域から帰国した旅行者にNWS感染を確認したことがあります。上記地域へ旅行し、傷口が開き、屋外で長時間過ごす場合は、NWS感染のリスクが高い可能性があります。

ヒトの主な症状は以下のとおりです。

・皮膚の傷や潰瘍(かいよう)の中、あるいは耳、鼻、目、口の中にNWSの幼虫が動いているのを感じたり、または見かけたりする。

・数日で悪化する痛みを伴う皮膚の傷や潰瘍

・害虫発生場所から悪臭が漂う

・開いた傷口からの出血

また、幼虫が存在する傷口には細菌が感染し、発熱や悪寒などの症状を引き起こす可能性があります8), 11)

 

6.診断

NWSの感染は、多くの場合、温血動物の既存(pre-existing)の傷口の存在と関連しますが、粘膜や耳にもその病変が認められることがあります。傷口はすべて、NWSの幼虫の有無を検査する必要があります。寄生部位は、悪臭を放ち、化膿し、血性または膿性の分泌物を伴う場合があります12)

NWS診断のための検体を得るため、ピンセットを用いて複数の傷口から幼虫を丁寧に取り除きます。可能であれば、さまざまな大きさの幼虫を採取します。検体は、アルコール(エチルアルコールまたはイソプロピルアルコール)を入れた密閉可能な試験管などに室温で保存します13)

 

7.対策

米国のNWSに対する効果的な根絶戦略は、以下の3つです14)

1)動物の移動における効果的な管理

2)強力な監視システムと一般市民への啓発

3)不妊虫放飼技術の活用

2026121日、USDANWSグランドチャレンジ(NWS Grand Challenge)を開始しました14。具体的には、(1)メキシコにおけるNWSのまん延防止、(2)NWSの米国への侵入阻止、(3)治療薬などNWSに対する備え、(4)NWSの撲滅、(5)継続的なイノベーションです。また、上記五つの分野の計画の達成により食料生産者を支援しするとともに、国内の食料供給を保持し、NWSの影響からの長期的な回復力の構築を目指しています。また、40のプロジェクト15)(合計約1500万ドル)などにより、NWSの検出能力を高めるとともに、その制御および根絶手法の開発を加速し、NWSに対して迅速に対応する能力を強化しています16)

米国では、NWSに感染した牛やその他の動物が群れにいる場合でもとう汰は実施しない代わりに、NWS感染が疑われる動物の飼養施設においては、NWSの検査が完了するまで動物の移動を禁止します。NWSに感染した動物は、すべての傷が治り、21日後に再感染の兆候が見られなくなるまで治療と隔離が行われます。

まれに、人道的な理由または治療が不可能な場合、動物に対して安楽死が適用される場合があります2)

NWSに対して効果がある殺虫剤として、ペルメトリン、クマホス、シペルメトリン、プルポキスルなどがあります17)

NWSの幼虫症から回復した動物は、農場での隔離の解除などの規制の要件を満たし、米国農務省食品安全検査局(FSIS)の検査に合格すれば、食料として供給可能です。FSISの検査は、動物の人道的な取り扱いと食品安全に関する要件の遵守を保証し、と畜前後のFSISの検査により、と体全体またはその一部が食用として認められるのか判断されます。なお、重度にNWSの感染を受けた動物は、食料として供給されません2)

 

8.予防

NWSの成虫が生息する地域では、成虫を避けることが重要です8)

(1)傷口を清潔に保ち覆う

(2)室内で就寝する場合、窓を閉めるか、網戸付きの窓を使用。屋外で就寝する場合、蚊帳または網戸付きのテントを使用

(3)肌を保護し、虫刺さされを防ぐために防虫剤を使用

(4)衣類および装備品を、殺虫剤(ペルメトリンを0.5%含有製品等)で処理

(5)ゆったり(Loose-fitting)とした長袖シャツと長ズボン、帽子、靴下を着用

USDAは、米国とメキシコの国境沿いでNWSの集中的な監視を行い、米国内における迅速な対応を整備しています。この対応には、テキサス州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、カリフォルニア州に設置した100個以上のNWS専用の捕獲器(Trap)と約7,500個の昆虫(Insect)の捕獲器が含まれます。

USDAは、捕獲された野生動物についてもNWSの検査を行っています。メキシコにおける捕獲、監視、移動に関するプロトコールは、NWSが米国に到達する前の発見に役立っています2)

USDAは、米国内務省および各州の野生生物機関と連携し、野生生物の監視と予防に関して協力しています。仮に野生動物がNWSを米国内に持ち込んだとしても、これらの活動とUSDAの広範な監視体制により、NWSの迅速な発見と対応が可能です2)

 

9.治療

1)ヒト

傷口や身体にNWSの幼虫がいる、またはその感触がある場合、医療機関で診察を受けます。その際、最近、中南米、カリブ海諸国、またはメキシコに旅行した場合、その旨を伝えるようにします。

必要に応じて外科手術により、幼虫を1匹ずつ取り除きます。なお、幼虫や卵を自ら取り除くことは推奨されません。傷口からNWSの幼虫や卵が落ちた場合、密閉容器に消毒用アルコールを入れて医療機関に持参します。生きた幼虫を適正に処理せずに屋外に捨てた場合、その地域でNWSがまん延する可能性があります8), 11)

2)動物

NWSに感染した動物は、獣医師のアドバイスをふまえ治療する必要があります。

米国農務省動植物検疫局(APHIS)は、獣医師など向けに標準作業手順書を作成し、治療について以下のように述べています13)

1)傷口およびその周囲のNWSの卵と幼虫を除去後、消毒を実施。必要に応じて幼虫駆除効果のある医薬品(家畜用イベルメクチンなど)を投与

2)1)の適切な治療の24時間後、傷口に生きた幼虫の存在を確認および除去

3)感染または隔離施設の清掃と消毒

(1)幼虫はすべて、アルコール処理し、密閉可能な状態にして廃棄

(2)飼養場所および資材は、殺虫剤を散布後、物理的にハエの幼虫や蛹を除去し、(1)の方法で廃棄

(3)敷材は、撤去前に殺虫剤を散布後、速やかに袋に入れ、敷地外への移動/処分前に、袋の内外を殺虫剤で十分に湿らせ、更に袋で密閉および殺虫剤を散布

(4)飼養場所は、動物が残留した殺虫剤の曝露(ばくろ)を防ぐため、温水と石鹸で洗浄

FDAは、611日、犬及び猫のNWS治療用ジェネリック薬ニテンピラム錠 (Nitenpyram)の緊急使用を許可しました18), 19)

 

参照資料

1) United States Department of Agriculture (USDA) APHIS (Animal and Plant Health Inspection Service). New World Screwworm. (https://www.aphis.usda.gov/livestock-poultry disease/cattle/ticks/screwworm)

2) USDA APHIS. The Facts About New World Screwworm (https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/nws-myth-busters.pdf)

3) USDA APHIS. Eradicating New World Screwworm with Sterile Insect Technique. (https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/factsheet-eradicating-nws-sit.pdf)

4) 小川重郎, 1993. 害虫を自滅させる防除法. 化学と生物. 31(2). 137-139.

5) WOAH, WAHIS (World Animal Health Information System).  (https://wahis.woah.org/#/in-review/7596?fromPage=event-dashboard-url)

6) WOAH, New world screwworm ( Cochliomyia hominivorax ) (https://www.woah.org/en/disease/new-world-screwworm-cochliomyia-hominivorax/)

7) Centers for Disease Control and Prevention (CDC). New World Screwworm Myiasis. (https://www.cdc.gov/dpdx/newworldscrewwormmyiasis/index.html?utm_source=openai

8) CDC. About New World Screwworm. (https://www.cdc.gov/new-world-screwworm/about/index.html)

9) USDA APHIS. Confirmed Detections of New World Screwworm. (https://www.aphis.usda.gov/animals/animal-health/livestock-and-poultry-disease/current-status/us-confirmed-cases-new-world

10) CDC. New World Screwworm Outbreak. (https://www.cdc.gov/new-world-screwworm/situation-summary/index.html

11) CDC. New World screwworm, What You Need to Know. (https://www.cdc.gov/new-world-screwworm/media/pdfs/2025/09/NWS-What-You-Need-to-Know-cleared-508.pdf

12) USDA APHIS. New World Screwworm Photo Gallery. (https://www.aphis.usda.gov/livestock-poultry-disease/cattle/ticks/screwworm/new-world-screwworm-photo-gallery

13) USDA APHIS. Standard Operating Procedure for Possible Detections of

New World Screwworm in Animals. (https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/aphis-sop-detection-nws-in-animals.pdf)

14) USDA APHIS. New World Screwworm Domestic Readiness and Response Policy Initiative. (https://www.usda.gov/sites/default/files/documents/nws-visit-policy-brief.pdf)

15) USDA APHIS. New World Screwworm (NWS) Grand Challenge Award Selections. (https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/nws-grand-challenge-recommended-spending-plan.pdf)

16) USDA APHIS. USDA Invests in Projects to Strengthen New World Screwworm Preparedness and Response. (https://www.aphis.usda.gov/news/agency-announcements/usda-invests-projects-strengthen-new-world-screwworm-preparedness

17) USDA APHIS. Pesticides for Control of New World Screwworm ( Cochliomyia hominivorax ) (https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/pesticides-for-nws.pdf

18)Food and Drug Administration (FDA). FDA Issues Emergency Use Authorization for Generic Over-the-Counter Drug to Treat New World Screwworm in Dogs and Cats (https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-issues-emergency-use-authorization-generic-over-counter-drug-treat-new-world-screwworm-dogs-and

19) FDA. Fact Sheet: Emergency Use Authorization of Nitenpyram Tablets (nitenpyram) for New World Screwworm (NWS).

https://www.fda.gov/media/193065/download?attachment

(文責:One Healthリサーチセンター社会・国際連携統括室 菊池 栄作)

 

 

一覧はこちら

ご寄付のお願い donation

OHRCでは研究、教育活動に加え、学内連携、国際連携、産学連携、及び統合データベースの運用、特殊検査サービスの展開と多岐にわたる活動を行っています。これらの活動を支えるためのご寄付を是非お願い致します。

頂きました寄付金は大学からの交付金や外部資金では賄いにくい用途(例えば統合データベースの運用、特殊検査サービスの展開等)を中心に柔軟に活用させて頂きます。

※上記ページ(学部等支援事業)から申込みいただき、寄附目的欄に『獣医学研院One Health Research Center』とご入力ください。