【感染症発生情報】米国における高病原性鳥インフルエンザウイルスの牛への感染について

2024/5/23

 本知見は、ホームページ掲載時点の参照資料をふまえて作成したものであり、詳細については同資料を確認いただきますよう、お願いいたします。
なお、現時点で本邦において高病原性鳥インフルエンザウイルスの牛への感染は確認されていません。


 2024年3月25日、米国農務省動植物検疫局(USDA APHIS)は、泌乳量や食欲低下などの症状を示す米国カンザス州の2つの酪農場とテキサス州の1つの酪農場の未殺菌乳およびテキサス州の酪農場の乳牛の口腔咽頭スワブを用いた検査の結果、高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAI:Highly Pathogenic Avian Influenza)の感染を確認し、これまで計9つの州*1で46群*2(全て乳牛)(5月16日時点)確認されています(1, 2, 3)。

*1 発生州(発生群数):
テキサス州(TX)(13)、ミシガン州(MI)(12)、ニューメキシコ州(NM)(8)、カンザス州(KS)(4)、アイダホ州(ID)(4)、コロラド州(CO)(2)、オハイオ州(OH)(1)、サウスダコタ州(SD)(1)、ノースカロライナ州(NC)(1)
*2 APHISホームページ上46事例、CDCは52事例と公表

家畜におけるHPAIが確認された州2

 

 最近テキサス州から牛を導入したミシガン州の乳牛群においてもHPAIウイルスの感染及び牛から牛への伝播が確認されました(4)。感染牛の生乳は、初乳のような濃厚で濃縮されたものであり、臨床症状は比較的軽く、感染牛は感染後約7〜10日に回復するとされています(5)。

 その後、米国当局が詳細な調査を行い、牛から家きんへのHPAIウイルスの伝播および臨床症状のない牛がHPAIの検査で陽性となったことも確認しましたが、現時点でこのHPAIウイルスがヒトへの感染性を高めるような遺伝子変異は確認されず、現時点で公衆衛生上のリスクは低い状況です(3, 6)。
 
 上記状況などをふまえ、USDAは連邦命令(Federal Order)を発表し、4月29日以降泌乳中の乳牛の州間移動前のPCR検査を行い、A型インフルエンザの検査結果陽性の場合の報告を義務付けました(7)。検査陰性の場合、サンプル採取後7日間以内であれば獣医検査証明書を添付の上で州間移動を可能としました。また、検査陽性の場合、牛群所有者は、牛の移動履歴を含む疫学情報を当局に提供するとともに、その牛を30日間隔離・待機させる必要があります(2, 8)。
 
 米国内では、健康動物からのみ搾乳した乳をヒトが消費するために低温殺菌などを行う加工施設に送ることを酪農家に義務付けているとともに、感染動物の乳は、食料として供給されません。低温殺菌は、乳中のインフルエンザなどのウイルスや細菌を不活化することから、州間を移動する牛乳に必要な措置としています(1, 9)。FDAは、17州の小売店から採取した乳製品(38州、132か所の加工施設で生産)サンプル297個について遺伝子検査(定量的リアルタイムPCR)およびウイルス分離を行ったところ、60個が遺伝子検査陽性でしたが、全てのサンプルからウイルスは分離されませんでした(9)。

 また、APHISは、「USDA は厳格な食肉検査プロセスをもち、米国農務省食品安全検査局(FSIS)の獣医師が、全ての連邦家畜と畜施設において、と畜前検査を行うとともに、すべての牛の枝肉はと畜後検査に合格しており、食料供給上適当」としています5。5月16日、APHISは牛のひき肉にHPAI(H5N1亜型)ウイルスの代替物(surrogate)を高濃度摂取し、FSISが推奨する調理温度(145℉、160℉(約63℃、約71℃))の加熱が、ひき肉中の同ウイルスを除去できることを実証しました(10)。

 FSISは、HPAI(H5N1亜型)ウイルス検査陽性の乳牛群が飼養されている州の小売店から採取した牛ひき肉のサンプル30個についてHPAIの遺伝子検査を実施したところ、すべて陰性でした(11)。

 4月1日、米国疾病予防管理センター(CDC)は、HPAIウイルスに感染したとされるテキサス州の乳牛と接触し、目の充血や不快感などの症状を呈する酪農場関係者がHPAIウイルスに感染し、隔離および抗ウイルス薬の治療後に回復していることを報告しました。米国内のヒトにおけるHPAI(H5N1亜型)検査陽性症例は、2022年のコロラド州の症例に続き2例目です(12)。CDCは、今後、HPAIウイルス感染動物と直接接触したヒトの感染の可能性はあるが、公衆衛生に関する現時点のリスクは依然として低いとしています(3)。
(文責:One Healthリサーチセンター社会連携部門 菊池 栄作)

〇参照資料:
1.USDA APHIS(2024年3月25日):https://www.aphis.usda.gov/news/agency-announcements/federal-state-veterinary-public-health-agencies-share-update-hpai
2.USDA APHIS(2024年5月22日):https://www.aphis.usda.gov/livestock-poultry-disease/avian/avian-influenza/hpai-detections/livestock
3.CDC(2024年5月22日):https://www.cdc.gov/flu/avianflu/avian-flu-summary.htm
4.USDA APHIS(2024年3月29日):https://www.aphis.usda.gov/news/agency-announcements/usda-fda-cdc-share-update-hpai-detections-dairy-cattle
5.USDA APHIS(2024年4月24日):https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/hpai-dairy-faqs.pdf
6.USDA APHIS(2024年5月22日):https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/guidance-dairy-cattle-livestock-exhibition.pdf
7.USDA APHIS(2024年4月26日):https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/aphis-requirements-recommendations-hpai-livestock.pdf
8.USDA APHIS(2024年4月25日):https://www.aphis.usda.gov/sites/default/files/federal-order-faq.pdf
9.FDA(2024年5月20日):https://www.fda.gov/food/alerts-advisories-safety-information/updates-highly-pathogenic-avian-influenza-hpai
10.USDA APHIS(2024年5月16日):https://www.aphis.usda.gov/livestock-poultry-disease/avian/avian-influenza/hpai-detections/livestock/h5n1-beef-safety-studies
11.USDA APHIS(2024年5月1日):https://www.aphis.usda.gov/livestock-poultry-disease/avian/avian-influenza/hpai-detections/livestock/h5n1-beef-safety-studies
12.CDC(2024年4月1日):https://www.cdc.gov/media/releases/2024/p0401-avian-flu.html

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